第7章 あなたの婚約者です
どうやら、悟が来ると、しずくが予測していた事は彼に取って想定内のようだった。
そんな事バレてもどうでもいい。
しずくは離婚の話を進めたい。
悟は離婚の話を止めたい。
お互いに思うところは違えど、この旅行を一緒に過ごしたい事は同じなようだ。
しずくはニッコリ笑って悟を見た。
本当は悟に着いて来て貰いたかった旅行だ。
そのしずくの笑みに、悟の眉が動いた。
しずくは何かを企んでいる。
それが分かっていても、一緒に行きたい。
新婚旅行すら行っていない、2人の初めての旅行はそれぞれの思惑を胸に抱いて、現地仙台に向かった。
「ちょっ!悟!新幹線の時間!」
新幹線に乗る前に甘い物を東京駅で買い占める悟に、しずくは慌ただしく声をかける。
「しずく、新幹線止めておいてよ。」
出発時間が間近なのに、専門店街で甘いお土産を吟味している悟の背中をしずくが引っ張る。
新幹線を故意的に止める賠償金がいくらなのか…。
その甘味の何千倍も掛かるというのに…。