第2章 離婚して下さい
…思えば、しずくのこんな表情すら見た事は初めてかもしれない。
しずくはいつ見ても綺麗に身支度をしていて、その表情が崩れた事は無かった。
会話すらこんなにした事はあっただろうか。
10年夫婦として過ごして、しずくはこんな表情をするのかと初めて知った。
まさかそんな会話が離婚の話だなんて……。
おかしくて許せるはずも無かった。
まぁ悟がこんな楽な結婚生活を、すぐに手放す事は無いとしずくも分かっていた。
「……ふーん……なら離婚はしなくてもいいわ…。」
意外にあっさり納得したしずくに、悟は不信感を隠さなかった。
そして次のしずくの言葉に、結婚生活で1番驚かされた。
「離婚を認めないなら、愛人を作る事を承諾して。」
真っ直ぐに悟を見ながらしずくは言った。
それがあたかも当たり前の主張の様に。
悟は改めてしずくの顔をマジマジと見た。