第6章 あなたは私の何を知っているの?
知り合った男は、挨拶の印象も良くて、同じ映画を見て自分の感想を素直に教えてくれた。
よく分からないが、エスコートもスマートだったと思う。
なのに今…。
こうして来る連絡に躊躇しているのは、自分が既婚者だからだ。
相手の男は未婚の独身だった。
そしてしずくを気に入ってくれたと思う。
このまま付き合って、あわよくば結婚できて。
そんな未来を想像しているのだと分かった。
離婚を考えていると相手に言ってあるとしても、既婚と未婚の差は拭えなかった。
そんな事にはならないだろうが、悟がもし相手を攻撃したかったら加害者になるのは、あの優しそうな男だ。
何よりあの男はきっと、離婚するまでしずくを抱かないだろう。
それは道徳に沿って褒められるべき事なはずなのに。
しずくはすでにそれだけでは物足りなかった。
悟に与えられた情欲は、悟に抱かれてさらに早速した。
もうあの衝動を味わえない恋愛は出来そうに無い。