第1章 Episode 01
リヴァイとて、本気で自分に興味を持って近づいてくる者を拒むつもりは無い。ここで調査兵として生きて行くと決めた限りは、命を預け合う仲間として、自分からも彼らに歩み寄らなければならないことはわかっている。エミリーはリヴァイのそんな気持ちもわかっていた。
「エルヴィンもリヴァイのことをもっと知りたいって言ってた。貴方の立体機動術を凄く褒めてたんだから」
「どうだかな。この前はガスを使いすぎだと小言を言われたぞ」
「....もう。貴方達って素直じゃないんだから。側で見てる分には面白いけれど」
「あ?」
エミリーは軽くため息を吐きながら、物品点検の作業を終わらせ、その場を後にしようと準備をし始める。思えばリヴァイとここで話し始めてから30分程が過ぎていたことに、エミリーは少し驚いた。エミリーはリヴァイのことを最初はそっけない人だと思っていたが、彼は案外口数が多く、話も弾む。そして何より、彼が自分達調査兵団に歩み寄ろうとしていることを知って嬉しく思っていた。
「_じゃあ、私は戻るわ。....それで。はい、これ」
「....?」
そう言って、エミリーはリヴァイに清潔な紙に包んだ物を渡す。それは先程まで紅茶の瓶の中に少しだけ残っていた茶葉を包んだものだった。
「もう残りはそれだけしかなかったから、全部持っていっていいわ。数日後にまた補充の物品が届くから、紅茶があったら貴方に教えてあげる。もう消灯時間なんかに忍び込んじゃだめよ」
「....助かる」
やはり彼は言葉選びが素直じゃない。だけどその言葉の真意を汲み取り、悪い人ではないと確信したエミリーは、安心したように微笑みの表情を浮かべた。
「_その、さっきの話。私も貴方と仲良くなりたいって思ってるから。....今日は貴方と少し話せて嬉しかったわ。おやすみなさい」
「....」
リヴァイは最後のエミリーの言葉に何も返せないまま、そこで彼女と別れた。自分も彼らのことをもっとよく知りたい。「本当の意味で彼らの仲間になれるだろうか」今まで抱いていたそんな不安は掻き消えて、リヴァイはまた一歩踏み出すことになるのだった。