第1章 Episode 01
「各分隊長の補佐官は物品の管理を任されているの。でも日中だと訓練とか会議に出席しなきゃだから、なかなかね」
「遅くまでご苦労なこった」
「ふふっ、ありがとう」
別に彼女に対して労いの言葉をかけたわけではない。皮肉のつもりで言った言葉に、何が面白いのか、笑いながらありがとうと言うエミリーに、リヴァイはおかしな奴だと頭の中で考える。笑ったり泣いたり、かと思えば真剣な表情で仕事に打ち込んでいたり。まったく、女というものはよくわからない。
「そういえば、貴方これを探してるんじゃないの?最近在庫の減りが早いと思ってたのよね」
しばらくしてまた突然、彼女から声を掛けてきたかと思うと、その手には紅茶の茶葉が詰められた瓶があった。だが、中身はもうそろそろで無くなりそうである。
「ここにあるのは自由に持って行って良いけど、こうやって夜に来るのはよしてよね。動物かもと思ってちょっと怖かったんだから」
「訓練で男を投げ飛ばしてたって奴に言われたくねぇよ」
「....ハンジから聞いたのね。訓練兵時代のことなのに」
エミリーはペラペラと自身の過去を言いふらしている同期の顔を思い浮かべながら、苦虫を噛んだ様な表情をする。彼女とて、いくら兵士になる為とはいえ、人間を投げ飛ばすのは乙女としてどうなのかと気にしている様である。
「あいつはうるせぇし、しつこ過ぎる。モブリットが気の毒だ」
「リヴァイと仲良くなりたいだけなのよ。付き合ってあげて」
「フン...」
「ハンジだけじゃないのよ?みんなは貴方の実力を認めてる。同じ調査兵団の仲間として、仲良くしたいのよ」