第1章 Episode 01
あれから少し月日が流れ、調査兵団は新たに実施が決定した壁外調査へと準備を進めていた。
これまでは一度壁外調査を終えると次の機会は早くとも1年後、長い時は2年近く空くこともあった。しかし、先のエルヴィン達の工作により議会の壁外調査反対派のメンバーは更迭され、議会という最大の障害は消え去った。以前の調査から僅か3ヶ月という間隔で壁外へと赴くこと、そして新たに導入が検討され始めている長距離索敵陣形の一部試験的実施など、確かに新しい風が兵団へと吹き始めている。
この頃、リヴァイは周囲の調査兵とはすっかり馴染むようになり、いつもの様にハンジと揶揄い揶揄われの応酬を繰り広げていた。比較的彼と親しい彼女やエミリーの仲介で、分隊長クラスのミケ・ザカリアスやあのエルヴィン・スミスとも交友を結ぶようにもなっていた。とりわけリヴァイが意識していたエルヴィンは、最初こそ完全無欠の指導者としての印象を持っていたが、彼の人間味ある側面にも多く触れることとなった。良き友人、良き仲間としての時間を送るとともに、巨人との闘いという大きな壁にも向き合う日々。充足した毎日を暮らすリヴァイは、地上の生活も悪くないと考える様になっていた。
_リヴァイへ、
新しく届いた茶葉のお裾分け
エミリー_
またあの夜以来、エミリーは約束通りに新しく入荷した茶葉の報せとともに、その現品を少量紙に包んで時折りリヴァイに贈るようになっていた。リヴァイも定期的に受け取るエミリーからの気遣いを、楽しみに待つ様になっていた。
元よりエミリーはこれまでリヴァイ以外の兵士達にも、その嗜好や願いに合わせた物品を取り寄せて、少しでも日々命を掛けて戦いに備える彼らを支えていた。調査兵団という爪弾きの組織が持つ少ない予算を基に、何とか工面して兵士達の士気の維持に務める。それが出来たのは、一重に彼女の能力と兵士達を思う心からだった。