第6章 夏風@仁王雅治
背中越しの「いってらっしゃい」に、駆け戻ってしまいとうなる。
コートに戻ると、ニコニコと嬉しそうな幸村の隣には柳。
「...言いたいことがあるなら言いんしゃい」
「ううん、無いよ」
「俺もない」
やりづらいのぉ、と顔を逸らす。
前ん、突然「仁王の好きな子、🌼さんだっけ?下の名前、🌸っていうんだね」と笑顔で伝えてきた幸村。
その言葉に固まっとると、その場におった柳が、今更知ったのか?と言うから、らしゅうもなく慌てた。
「わかりやすすぎる」と神の子と参謀に言われ、誤魔化すこともできんかった。
部活が終わり、いつもならちょっと後輩をいじったりして屯する部室を早々に抜け出した。
コートに戻ったが、🌸の姿が無か。
待っとってほしいと言ったんに、と辺りを見ながら探しとると、校舎裏まで来とった。
竹林の方に向かっとると、静かな中に僅かな声が聞こえた。
聞き間違えるはずん無か声に、走り出す。
🌸ん姿を捉えると当時に、「自分」が見えた。
彼女に何かを話そうとする「自分」に、待ちんせぇっ!と息を切らしながら立ちはだかる。
柳生と対峙し、その目を見て気づく。
柳生を俺じゃと思っとった🌸の様子を気にするでもなく、「お膳立てはした」と言って、柳生はそそくさと行ってしもうた。
呆然のその背中を見送る🌸に、やられた、と傍にあったガーデンチェアに座り込む。
ここまでされて、彼女に何も言わんと戻れば、ある意味袋叩きにあいそうじゃ、とひそかに笑った。
柳生と何を話していたのかと聞けば、例のジンクスの事だった。
昼に、特に期待も無く寄った購買で焼きそばパンを買えたのは、こんためじゃったか。
図書館の「お悩み相談」のネタバラシをしてやると、驚いとった。
花壇の手伝いをしたのは、幸村に言われて仕方なくじゃったが、種明かしを嬉しそうに聞く姿にやってもいないお悩み相談をした、と嘘をついた。
「告白、するの...?」
そう言った🌸の声に、確信した。
ここは校舎裏。
少しんでも確率が上がれば、と、ここ数年、勝率が下がっとると噂じゃったが、木の下に呼び込んだ。
好きだ、と伝える声が震えていて、(格好つかんな)と、瞬きを忘れて見上げる🌸の瞳だけを見ていた。
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