第33章 神戸北野へ行こう!
この入口から他の異人館にはない
独特すぎるインパクトの異人館は。
明治後期にサンセン氏の
自邸として建設された洋館で。
チューダー様式を模した外観をしていて。
館内には彫刻の三大巨匠であるロダン、
ブールデル、ベルナールの傑作を
はじめとした西洋と東洋の彫刻を
中心とする美術品が所狭しと飾られている。
『この…山手八番館は…
ある物が有名で人気なんですよ?』
北野の端っこに方にある、
このちょっと妙な雰囲気の
異人館が人気なのだと彼が言って来て。
「ここに…人気な何かがあるの?」
『多分、順番待ちしてると思いますよ』
そんなに…人気なの?
何に順番待ちをしてるのか
気になりながらも7館共通チケットで
山手八番館に入館した。
『サターンの椅子ってご存じですか?』
「ええっ、悪魔の椅子??」
その名前を聞いて、
真っ先に思い浮かんだのが
何かしらの拷問器具??なのかと。
なんたらの牡牛…的な…。
そんな…座ったら地獄が見える椅子??
『あははははっ、違いますよ。
悪魔の椅子じゃないですよ、
巴さん、そんな椅子、
座ったら呪われちゃいますよ~』
「え?座って良いの?」
こう言う異人館の家具って
触らないでって言う
見るだけのイメージだけど。
『それも…座ってお願い事を
思い浮かべるだけで良いですし
個数制限も回数制限も無いんですよ?』
そんな風に聞くと…
今日…巡った各所の
縁起のいい感じの代物よりも
凄い…力がありそうな椅子だけど…。
港斗君が教えてくれたんだけど、
サターンと言うのは、
私が想像した悪魔のサタンじゃなくて。
ローマ神話のサートゥルヌス神のことで、
サターンは英語読みの名で、
農耕の神で土星の守護神でもあり、
ギリシャ神話のクロノスと
同一視されている神様なのだそうだ。
だから、悪魔の椅子…じゃなくて
神様の椅子…だったんだけど。
お部屋の…両サイドに…
後ろに豪華な刺繍がされた
カーテンがあるから。
王様と王妃様の椅子みたいにも見える。
赤いベロアの…座面と背もたれに
ぎっしりと繊細な彫刻が
施されていて、こんな椅子に
座って居んだって…。
ちょっと気が引けてしまうが。