第27章 城崎温泉の…夜
巴が…自分が浸かっている
御所の湯のお湯を手に掬って
その手の中に溜まっている湯を眺めた。
御所の湯を後にして、
彼と合流すると、手を繋いで
通って来た道を引き返して。
歩いて4分程の場所にある
さっき外人さん達が写真を撮っていた
一の湯に到着した。
さっきの御所の湯が、
京都御所なら、この一の湯は
歌舞伎座の様な外観をしている。
城崎温泉のランドマーク的な外湯で、
城崎温泉街の丁度中心に位置する。
その昔、温泉医学の祖である香山修得が
「天下一の湯」と褒め称えことから、
「一の湯」と言う名前が付いたのだそうだ。
『雰囲気のある…建物ですよね。
…外国人観光客だけじゃなくて
日本人の観光客も…ここの
外観を撮ってる人…、
昼間に通った時にも見ましたし』
一の湯の所には、
ちょっとした合間時間に
城崎温泉に立ち寄ったけど
ゆっくり温泉に浸かってる時間が
無いわ~って人のためにも。
温泉街の散策で足がだるくなって
疲れたわぁ~って人のためにも、
無料で利用できる足湯もあるから。
城崎ビール片手にしながら
足湯を愉しんでいる人も居て。
岩盤を削って作られた
洞窟風呂が人気の外湯だ。
洞窟風呂を楽しんだ後は、
いよいよ城崎の外湯めぐりの
最後になる…最後の1つ。
城崎ビールを飲んだ
グビガブのお隣さんの
こじんまりとした外湯の
柳湯に…到着した。
「小さくてかわいい外湯だね」
何度か前を通ってるので
この柳湯がこじんまりしてるのは
その外観からも一目瞭然で。
小さいながらに和の
趣のある…建物をしている。
『この柳湯は…
子授けと安産に…ご利益が
あるって言われてる外湯ですよ?
もしかしたら…ご利益…が
あるかも…知れませんね?巴さん』
「ご…ご利益は…まだ…
もうちょっと…早いですって…。
お越し頂くのは…、しばらくは…
お待ちして貰うとか……が良いかな…ぁ」
何だろう…な…こう
意味深な感じな…言い方で
冗談…ぽくもあるけど…、
満更…冗談100%って感じにも…
聞こえない…のは…考え過ぎかな…?
『巴さんは
熱めのお風呂は得意ですか?』
「熱め?…うーん、熱いよりは
そこそこの方が…いいなぁ…」