第20章 2人の年越し
私も彼と付き合ってる内に
彼の考えそうだなって事が
分かる様になって来ていて。
『だから…その…その辺の
スーパーの奴よりも…
金箔が大きいのが入ってる
姫路の名城酒造の…
大吟醸…買ったんですよ…』
そう言って黒い木箱を出して来て。
木箱入り?て思ったんだけど
木箱風のプリントの化粧箱入りで。
蓋を開いてこちらに彼が
それを見せて来てくれて。
ベッドサイドテーブルの
ライトでその大きい
金箔入りの大吟醸を見ると。
確かにスーパーのそれよりも
3倍ぐらい大きい金箔が
漂って居て。それもボトルも
シャンパンみたいに封をしてあって。
シャンパングラスで飲んでも良さそう。
「高かったんじゃないの?これ…」
『いえ、このサイズで
Amazonで、2500円ですから
金箔入りで箱入りでの値段ですから、
そんなに高いやつじゃないですよ。
でも…酒造メーカーがワインボトル
みたいにしてるぐらいだから
シャンパングラスで飲むの、
良さそうですけどね?』
大吟醸は酒米を50パーセント以上
削り取って造ってるお酒だから。
雑味がない綺麗な味わいが特徴。
製造の過程でも秒の単位での
お米に水を吸わせる時間を調整したり
普通のお酒よりも手間暇が掛かってるから。
その味わいは綺麗だし、
香りはワインの様にフルーティーで
それでいて華やかな香りになる。
大きい金粉が入った
大吟醸をシャンパングラスで
ベッドの上で…飲みましょうなんて。
彼も…なんとも…贅沢なお家年越しを
用意してくれたんだろうと思うと。
スリ…っと巴が…隣にいる
港斗の身体にもたれ掛って擦り寄ると。
こっちの身体に彼が腕を回して来て。
『巴さん…、飲ませますか?』
そう言って自分の手にある
シャンパングラスを
掲げて見せて来ると。
自分の口に…グラスの中の
シャンパンを含んで巴の口を
自分の口で塞いで。
こっちが…むせない程度の量の
シャンパンを…口移しされると。
シャルドネの香りが…口の中に広がる。
こく…っと…キスをしながら
喉の奥にシャンパンを流すと。
シャンパンで冷えた口の中が、
彼の舌の熱で…熱くなって来るのを感じる。