第15章 雄介からの電話
雄介さんが言ってる内容は
私からは聞こえないけど、
彼が…ろくな物言いを
しないだろうと思って。
私が…雄介さんの言葉に
傷つかない様に…してくれてて。
よしよしと…空いてる方の手で
彼が…私の頭をなでてくれていた。
頭を撫でていた手の指先で、
目から零れた涙をすくってくれる。
『僕の…、大事な女性を…
これ位以上貴方の身勝手で
泣かせないで下さい……』
ピッ…と通話を終えると。
そのまま電源を落としてしまって。
ぎゅううと彼の身体に
包み込まれる様にして抱きしめられる。
「み…、港斗…くぅ…ん…っ…」
『すいません…巴さん…、
あの人と話をする方が…
巴さんには…辛かった…ですね…。
すいません…、巴さん…』
別に…自分が悪い所なんて
何一つ…無いのに…、
ずっと…私に…彼が…
謝ってくれていて。
彼の優しさと体温に包まれて。
ただ…泣く事…しか…出来ない。
何か…言わなくちゃ…って思うけど…。
上手く…考えも…言葉も…纏まらない。
『ちゃんと…改めて…、
巴さんには…言う…機会を…とは
僕も…ずっと…考えては…居るんですが…。
でも…、これは…、
今…の…貴方に…言わないと…
伝えないと…いけないなって…。
そんな風に…思うんです…』
ギュウウウと…強い力で
彼に抱き締められてしまって。
「港斗…君……ぅ…ッ…ん…」
『巴さん…、
今すぐの…話じゃないんです。
僕と…結婚して…、僕の…
奥さんに…なって…貰えませんか?
僕は…巴さんに
…そうなって貰いたいんです。
巴さんには…思う所も
多いとは…思うんですけど…。
でも…、僕は…、僕には…
巴さん以外の
女性と…そうしたいとも
そうなりたいとも…思わないので…』
「んんっ…、でも…、私…ッ…
港斗…君よりも…12歳も…年上、
なんだ…よ?オバサンだよ?
港斗君が30になったら、42だよ?」
『僕が30になっても、40になっても
その先もずっと、巴さんが
隣に居てくれるんだったら。
僕は…それで充分ですよ?』
でも…と…その続きを、
紡ごうとした唇を
彼の…港斗君の唇に塞がれてしまって。
そのまま…彼の熱に溶かされて。
彼の好きに…溺れそうになる…。