第15章 雄介からの電話
自分の言う事に異論を
唱える事が無かった私が、
自分が言って居る事に
そんな返事を返して来るなんて。
私と8年付き合って居た彼も、
想像にもして居なかったのだろう。
『巴…何、言ってるんだ?
俺に必要なのは…あの女じゃなくて…』
「何も自分に文句を言わずに、
貴方の身の回りの事を
全部してくれる家政婦が欲しいって事?
もう…、私には…お付き合いしてる
人が居るし、その人は
貴方と違って私との結婚を…
考えてくれてるから…。
もう、婚約もしてるの…、だから…
二度と私には電話して…来ないで」
ピッ…と…
通話を一方的に終わらせて。
そのまま、着信拒否設定に
その番号を設定しようとしてる時に。
また…同じ番号からの着信があって。
慌てて電源を落とそうとしたのを
港斗が自分の手を出して遮って来て。
巴の手からスマートフォンを
取り上げるとピッと通話ボタンを押した。
『巴ッ…!!
あの時の事だったら謝るッ
俺には、お前しか居ないんだよ、
お前の事…ちゃんと大事にするから…
だから、前みたいに…付き合おう…な?』
『すいません、勝手に
お話を聞かせて頂いてしまって
申し訳ありません、僕は…
彼女と友坂 巴さんと…
交際をさせて頂いております者でして。
貴方の元奥さんである、
森園美海と同じ会社で仕事をした
経験もあります。巴さんから
貴方のお話も…ある程度聞いて
存じてはいる…つもり…程度には…
貴方の事も知ってる…気ではいますが…』
港斗君が…通話を通常に
切り替えてしまったので。
彼に雄介さんが何を言ってるのかは
私からは聞こえなくて。
『貴方が…彼女を
追い出して要らないって
言ったんですよね?
貴方の元に巴さんが
戻る必要性があるんですか?
みんな森園が悪いって事ですか?
それは…貴方の身勝手な言い分でしか
ない話です、騙す方が悪いですか?
巴さんと交際中の身で、
森園さんの誘いを断らなかった
貴方は何も悪くない…
なんてことは無いですよね?』
「みッ、港斗…君…もういいよ…
もう…いい…の…、私は大丈夫…
私には…港斗君が…居てくれるから…。
もう…それで…大丈夫だし…、
何とも無いし…平気…だから…」