第77章 梅雨は紫陽花
駐車場に戻るまでの道の
段差の所で、葵がバランスを崩して
転びそうになったのを、
間一髪の所で小林が支えて。
『……蛯名さん…大丈夫……だった?』
『は…はいっ、す、すす、すいませんっ
こ、小林サン、ありがとうございますッ』
頭を何度もペコペコと小林に下げながら
葵が小林にお礼を言って居て。
自分が今…置かれている状況が
体勢を立て直して気が付いた様で…。
慌てて小林との距離を取ろうとして
更にバランスを崩してしまって、
また支えられて居て。
『あんまり…暴れると…、
下濡れてるし、転んじゃう…から…』
『……ふぁい…、すいません…』
そう…しょんぼりとしてしまって
すっかり大人しくなってしまって。
『小林君、そのままエビちゃんが
また転ばない様に、車まで
エスコートしてあげて下さいよ~。
あ、僕は巴さんの
エスコートしますんで』
と港斗君が言って、私の手を
恋人繋ぎにして繋ぐと。
お願いしますねぇ~と、そのまま
私の手を引いて…先々に…進んで行って。
逆にこっちと彼とは…身長差があるので
彼の速度で引きずられながら移動して。
後ろの2人とは距離を離されてしまう。
今は紫陽花の季節だから、
離宮公園に紫陽花を見に来てる人も多くて
車は駐車場の奥の方だったから…。
恥ずかしそうにしながら、手を繋いでいる
2人を見ていると、初々しい…と
自分が…彼と一緒にい過ぎて
忘れてしまった感情を
2人を見てると思い出す様な感じがする。
須磨の離宮公園を後にして
車で10分程移動すれば
デートと言えばここと言うほどの
間違いないスポットである
神戸ハーバーランドに到着する。
海風を感じながら
プロムナードを歩くだけで
デートしてるって感じがするもんな。
港斗君が言うにはちょっと
早めにお夕飯にして、
もう1ヶ所夕飯の後に皆で
行きたい場所があるのだそうだ。
『折角ですし…乗りますか?あれ』
そう言って港斗が指さしたのは
モザイクのシンボルでもある
モザイク大観覧車で。
まだ夜景を楽しむには早いし
健全なダブルデート感が凄いするが。
『観覧車…、乗った事ないです』
『…確かに…ない…』
『じゃあ、乗りましょう…よ…小林サン』