第12章 ぼんミイラ男とウーパールーパー
「へぇ、ミイラ男さんはぼんって名前なのね」
「え」
「え、ミイラ男さんがそう言ったんですか?」
俺に続き、隣にいたハナが驚きながらアリスに聞き返す。アリスはそうよと頷き、ハナは俺へ目を向けた。
俺は、アリスの言っていることは本当だと伝えたかったが、身振り以外にどうしたらいいか分からなかった。とりあえず片腕を上げると、ハナが恐る恐る俺の名前を呼んだ。
「……ぼん?」
そうそうそう!
俺はそう言いたくてハナの手に近付いた。俺はハナの手から離れて机の上に座っていたから自由に動き回れたのだが、やはり言葉が通じないとコミュニケーションも取りづらい。
「ふふ、貴方はぼんって言うのね」
だが、そこはハナというべきか、ここは俺の言いたいことが通じたらしく、そう笑って頭を撫でてくれた。
この歳になって女の子に可愛がられるのはちょっと恥ずかしかったが、ハナは可愛いから許そう。俺は黙って撫でられた。
「そちらのぼんさんも可愛いわね」
と言ったのはアリスだった。実はあの水槽にいるウーパールーパーもぼんって呼んでるの、とアリスが言うので見てみると、紫の水棲生物がこちらをじっと見据えていた。
「俺の飼い主可愛いでしょ」
水槽の中にいる紫のウーパールーパーがそう言って来た。だから俺は負けじと言い返してやった。
「ハナの方が可愛いし」
結局どっちも可愛いという話にはなるのだが、まぁそこまで語る必要はないだろう。