第1章 上司命令 ※
満足するまでを抱いた後、頭を仕事に切り替えてお互い向き合う。
「すまない。
上からの指示で・・・が1番適任だったんだ」
「・・・私は、何をすればいいんでしょうか」
「まずは僕と共に敵対組織の情報収集をしてもらう。常に黒の組織の人間に信用されることを考えて」
普段プライベートで仕事の話はしないが、今日はせざるを得なかった。
上の者から「ジンを誘惑して油断させろ」と言われ、真っ先に浮かんだ人物がだ。
いつも優しく穏やかで、一緒にいるだけで癒される。
可愛いのに時折り見せる色気に、あの冷酷なジンも虜になるだろうと確信していた。
「不安・・・です・・・」
「・・・心配ない。僕が側にいるから・・・」
本音は僕だって・・・
にNOC(ノック)なんてさせたくない。
僕から離したくない。
よりによって、あのジンの元へ・・・
少しでも怪しまれたら追い込まれて始末されてしまう。
でも、これは・・・・・・日本のためなんだ。
「組織で得た情報は小さいことでも僕に逐一報告してくれ」
「・・・・・・はい。
風見さんも、組織に潜入してるんですか?」
「いや・・・風見は、していない。
公安からは僕と・・・諸伏景光・・・」
「えっ・・・・・・諸伏さんも・・・?」
一気に顔が青ざめる。
無理もない。今まで何も聞かされていなかったのだから。
隠したかったわけではないが・・・言えなかったんだ。
「なるべく僕がをフォローするが・・・どうしてもできない時は諸伏を頼って」
「・・・・・・・・・わかりました。
組織の幹部に・・・ジンの懐に入ればいいんですね」
「・・・・・・そうだ。できるな?」
「・・・できます」
の表情が変わった。
困難に立ち向かう時にスイッチが入った凛々しい表情だ。
頼もしい部下を持った、と思うと同時に、恋人としては寂しく思う。
命令しておいてそんなことを思っている勝手な自分に溜め息が出る。
「でも・・・プライベートでは、甘えてもいい?」
「・・・喜んで」
やっぱり可愛い。
こんな子に甘えられて落ちない男がいるのなら見てみたいものだ。