第6章 揺れ動く心 ※
「ん・・・」
アジトの自室に戻りシャワーを浴び、最後の気力を振り絞って髪をドライヤーで乾かした後、ベッドにダイブして泥のように眠った。
組織のスマホの鳴る音で目を覚ますと、昼の2時をを過ぎていて。
メッセージが1件。
"コートを返しに来い"
引きずって汚れてしまったから、クリーニングに出して返そうと思っていたのだが・・・。
そんな理由を述べても、結局「来い」と言われるのはわかってる。
降谷さんとの約束は夜7時。
コートを返したら買い物をして、自分の家で夕飯を作って彼が来るのを待とう。
とりあえず着替えとメイクを・・・と思いベッドから降りると、再びスマホが鳴った。
"3分以内に来い"
・・・なんて横暴でせっかちな人なんだ。
そのメッセージをぼんやり眺め、ふと目の前のドレッサーの鏡を見ると、目尻を下げて微笑んでいる自分が映っていた。
今の私はこんなに口元が緩んでるんだ。
これは・・・好きな人のことを考えている時の表情ではないだろうか。
零と仲が良かった時は、よくこんな顔をしていた気がする。
心から笑えなくなったのはいつからだろう・・・。