第5章 恋の蕾
「どうしやす?さっき撃ったFBIの死体・・・」
「逃すわけねぇだろ。潜って死体を見つけ、桟橋の陰から引き揚げれば・・・」
「ジン!消防艇が来てます!」
いつの間にか消防艇が近づいてきて、海猿島に放水をしていた。
FBIの回収をしていたら見つかるのも時間の問題だ。
「チッ・・・クルーザーを消防艇の逆側に付けろ!ズラかるぞ」
無線でクルーザーの運転手に指示をして
私たちは海猿島を後にした────
♦︎♥︎♦︎
「けど、残念ですね。結局FBIの面は拝めずじまい・・・」
「まぁいいんじゃない?殺したんだから」
キャメル捜査官・・・
本当に死んでしまったのだろうか。
キールが諜報員だということを知られずに済んだのは安心したが・・・なみかぜ公園から狙撃した人物のことも気になる。
もしかして、あの人がキールと電話をしていた仲間のFBI・・・?
「さっき撃った男のことならわかるわよ」
「え?」
「直接見るまでは半信半疑だったけど・・・アンドレ・キャメル。赤井が可愛がっていた、運転技術に秀でた捜査官よ」
ベルモットがスマホで男の写真を見せてきた。
組織に追われても逃げ続けていたことを考えると、運転技術に秀でているのは納得だ。
赤井って人がキャメル捜査官の仲間なんだ。
「前にバーボンと組んで情報を聞き出したことがあったから」
"バーボン"と聞いて身体が固まった。
この任務を終えたら報告をするために会うことになっている。
最近は恋人らしいことが1つもなく、連絡内容も組織についてのみ。
任務とは言え、他の女性を抱いていたことを知ってしまったのも気まずい。
彼は、今も私を好きでいてくれているのだろうか。
私は、自信を持って彼を好きだと言えるだろうか・・・。