第1章 上司命令 ※
「風見さん、書類のチェックお願いします」
「あぁ。このあと降谷さんが出社する。
に話があるから会議室で待っていてくれ」
「はい、わかりました。
・・・・・・あの、何の話でしょうか?」
「それは降谷さんに聞いてくれるか。
とりあえず、退社の準備をしておいた方がいいかもしれないな」
「え・・・?」
午後の光が薄れ
夕暮れの気配が混じり始めた頃──
突然、上司に言われた言葉に困惑した。
まだ仕事は残っているし、退社の準備はいつも仕事が終わった後にしている。
降谷さんが私に何の話があるのだろう。
しかも別室で。
この様子だと風見さんは内容を知っているが自分からは話せない・・・話してはいけない?
呼び出されるほど粗相をした覚えはない。
気が付かないうちに怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
考えてもわからない・・・。
風見さんの言う通り、机の上を整理と帰り支度をして。
指定された会議室で降谷さんを待つことにした。
しばらく会議室で待っていると
扉をノックして入ってくる降谷さん。
彼を見た瞬間、ゾクっと背筋が凍った。
降谷さんなのに、降谷さんではない。
見たことのない表情をしている。
「悪い、遅くなった」
「いえっ・・・お疲れさまです・・・」
何を言われるのか予想もできない怖さ。
この空気は叱られるわけではなさそうだが・・・
緊張で汗が滲む手をぎゅっと握りしめた。
「早速だが・・・単刀直入に言う。
、黒の組織に潜入してくれ」
「・・・・・・・・・」
黒の組織────
その組織は度々耳にするから知っている。
お酒のコードネームを名乗っている集団で、危ない薬を作り簡単に人を殺すという、冷酷で残酷な組織・・・。
「、聞いてるか?」
「・・・え、あっ・・・すみません・・・」
聞きたくない────
本能がそう言っている気がした。