第4章 コードネーム ※
「おはようございます、風見さん。
すみません、全然出社できなくて・・・」
「・・・久々だな。何を言ってるんだ。
お前にしかできない仕事をしているだろう」
あれから数ヶ月後、黒の組織に潜入してから初めて公安に出社して。
2年間ここで過ごしてきたのに既に懐かしく、いつ戻れるのだろうかと悲しくなった。
風見さんは変わらず私のことを気に掛けてくれて、私の居場所を残してくれていることがありがたかった。
「お疲れ。・・・も来てたのか」
「お疲れ様です!降谷さん!こちらの確認をお願いします」
「風見・・・声量を落としてくれ。頭に響く・・・」
「・・・!!」
挨拶もそこそこにデスクに向かう降谷さん。
彼が私の横を通る時に感じた、僅かなお酒と香水の香り。
もしかして・・・さっきまで・・・?
私ではなく、他の女性を・・・──
──あの日。
ジンに言われたことを報告すると「上手くやるように」と、一言だけ返された。
ジンの側に付くとなると、これまで以上に彼と会えなくなってしまう。
そうなっても目的の為なら構わないということなのか・・・。
気持ちを押し殺し、割り切ろうと決めたのに・・・
事あるごとにに弱い私が顔を出す。
私はまだ、彼の恋人なのか・・・恋人でいてもいいのか・・・
負の感情が心の中を渦巻いている。