第3章 黒ずくめの男
「気に入った。これからは俺に付け。ハニートラップはもうやらなくていい」
「・・・・・・はい?」
どこの誰だかわからねぇ野郎と寝るくらいなら、情報など得られなくていい。
そんなの他の奴にやらせておけ。
無駄なことに時間を割かずに俺といろ。
「俺の任務に付いてこい。常に俺の側にいろ」
「あの・・・私、末端ですし・・・」
「だから何だよ。バーボンとは一緒にいられて俺は無理だと言いたいのか?」
腹を括っておいて、まだあの男がいいのかよ。
世話係だと言っているが、最近は放置されているとウォッカから聞いている。
あの男の側にいても上手く言いくるめられて捨てられるだけだ。
胸糞悪ぃ。
俺に疑いの眼差しを向けている女。
何だよ、その目は。
俺が自ら側に置いてやると言っているのに。
『時間です』
約束の15分を知らせるバーボンの声にイラッとする。
番犬は大人しく待っていれば良いものを。
もっと長めに時間を取っておけば良かったと悔やんだが、これからは同じ任務に連れて行くし部屋にも呼べばいい。
「じゃあな。逃げんじゃねーぞ」
「・・・わかりました」
視線を逸らして返事をする女の顔を掴み、こちらを向かせようと手が出かかった。
焦る必要はない。
ゆっくり躾けてやる。
覚悟しておけよ────