第13章 キスで目覚めて ※
降谷さんの車からジンの愛車へ移動する。
ウォッカはその場に残ったためジンと2人きりで。
彼は煙草を片手にハンドルを握り、無言で車を走らせた。
横目でチラッと見ることしかできないが、この姿がかっこよすぎて・・・つい好きだと言ってしまいそうになる。
私を追いかけてくれたこと。
助けてくれたこと。
そして・・・キスをしたこと。
その理由を聞いたら、ジンは教えてくれるだろうか。
「ミモザ・・・・・・お前に聞きたいことがある」
「・・・聞きたい、こと・・・・・・」
先に言葉を発したのはジンだった。
バーボンと共に逃げていたのだから尋問されてもおかしくはない。
私もバーボンと同様に疑われている。
しかし、今のジンの雰囲気には柔らかさがあった。
────「ミモザ、目的地に着いたら聞きたいことがある」
あの時、ジンは私に何を聞きたかったの?
何を知りたかったの?
今から聞かれることは、あの時と同じもの?
海岸沿いに停車すると彼はこちらに顔を向けた。
じっと見つめてくる深緑の瞳に吸い込まれそうだ。
昨夜も2人きりになったが今は密室で。
シートベルトを外そうにもジンに掴まれ阻止されているため、逃げ場がない。
手に汗がジワリと滲む。
「ミモザ・・・お前の名前は何ていうんだ?」
「・・・・・・名前、ですか?えっ・・・と、瑠愛・・・」
「違う。本名だ」
全身の血の気が引いた。
聞きたいことって、私の本名・・・?
丸音瑠愛という名前が偽名だということは、すぐにバレるとわかっていた。
だからといって、わざわざ本名を聞いてくる人はいない。
未だに私から視線を外さないジンにゴクリと息を呑んだ。
本名を知ってどうするの?
NOCだと事実を暴いて殺す?
その為に追いかけてキスして・・・・・・なんて思いたくない。
カチャッとシートベルトが外され黒い壁に視界を奪われて。
煙草の匂いにクラクラして自分の感情が行方不明になった。