第12章 すれ違い ※
「あぁんっ!ジン・・・さん・・・、もっとぉ・・・っ!」
「チッ・・・うるせぇ。声抑えられねぇのか」
「だってぇ・・・・・・気持ち、いいの・・・!ジンさん・・・・・・もう・・・もう挿れて!」
記憶を失う前、俺とギムレットは恋人関係だった・・・・・・と言われたが、にわかに信じがたい。
いや、信じたくなかった。
恋人ということは、お互いがお互いを好き・・・・・・愛し合っていたということになる。
俺はコイツのどこが好きだったんだ?
考えても1つも見当たらない。
ハーフ顔の美人系でスラッとしたモデル体型。
そこら辺の男共が好きそうな容姿をしているのは認める。
しかし、俺の好みかと問われたら特にそういうわけでもない。
好きではないが恋人になったという可能性もあるが・・・・・・一体何の為に?
自分だけでは答えを見出せず、ウォッカに事実を確認しようとスマホを取り出すとギムレットの手が重なった。
いつものようにわざとらしく、瞳を潤ませ上目遣いで見つめられる。
この表情も、俺は愛おしいと感じていたのか・・・?
「ジンさん・・・・・・私、寂しかったです・・・。無理に思い出さなくてもいいので・・・また、恋人になってもらえませんか・・・?」
「恋、人・・・・・・」
重なっていた手が肩に置かれると、背伸びをしたギムレットの唇が俺のソレに触れた。
口付けることに関しては何の感情も湧かないが、僅かばかり罪悪感が芽生える。
誰に対しての罪悪感かは不明だ。
「んっ、ジンさん!」
抵抗せず、されるがままになっていると、受け入れられたと勘違いしたのか女は口付けを続けた。
それにしても・・・・・・コイツの匂いはどうにかならないのか・・・。
日が経てば慣れると耐えていたが、どうも慣れそうにない。
俺はもっと甘くて、ふわりと柔らかい香りが好みだ。
先程までこの場にいた無愛想な女のように・・・・・・
────アイツが好みなのではない。
何となく懐かしい香りがするだけ。
バーボンと2人きりの時、あの女の顔は緩むのだろうか。
俺には見せない笑顔を見せるのだろうか。