第11章 私の居場所
あれから1年が経ち、ジンの怪我は完治した。
・・・・・・記憶以外は。
身体の回復は誰もが驚く早さだったのに、戻らない空白の1年間。
「ミモザ、次の任務場所の確認をしたいので一緒に来てもらえますか?」
「・・・・・・・・・はい」
バーボンと顔を合わせることが少なかったのは、ジンが側にいて避けてくれていたから。
その彼が私から離れてしまったため、私とバーボンが組む任務が増えた。
「ミモザさんとバーボンさんって美男美女でとってもお似合いですよね〜!本当にお付き合いされてないんですか!?」
「ギムレット・・・それは何度も言ってるでしょ・・・」
「僕の片想いですよ。恋人になってもらえると嬉しいんですけどね?」
「・・・・・・」
本当に・・・
何度目だろうか、このやりとり。
ジンの記憶がないのを良いことに私とバーボンをくっつけようとするギムレット。
そんな彼女に笑顔で便乗するバーボン。
このやりとりは決まってジンがいる所で。
それなのに1つも興味を示さないジンに、消えたくなるほど惨めでお手上げ状態だった。
私がここにいる意味は・・・あるのだろうか・・・。
「そろそろ行きましょうか。では、僕たちはこれで失礼します」
「お気を付けて〜」
「・・・・・・」
ジンは私に何も言わなくなった。
今も煙草を片手に無言で座っているだけ。
「邪魔だ」
「必要ない」
言われ過ぎて傷付いていたけど、言われなくなるとそれはそれで寂しい。
ジンの目に私が映らなくなってしまったようで。
でも、1年前から変わらないことがある。
痛いほど感じるんだ・・・・・・
背中に・・・・・・彼からの視線を。
自惚れではないことをどうしても確かめたくて、扉が閉まるほんの一瞬だけ振り返った。
まさか振り返るとは思わなかったのだろう。
長い前髪から覗く深緑の瞳が大きく開き、持っていた煙草が彼の指からすり抜けていくのが見えた。