第10章 あなたは誰?
────どうしても思い出せない。消えた1年間の記憶・・・・・・
深い深い闇の中で眠っている時に夢を見た。
誰かが俺に笑顔を見せたり・・・
怒ったり・・・泣いたり・・・
愛おしい温もりに包まれているような感覚がした。
それは・・・・・・どんなものだっただろうか。
目を開いた瞬間、視界に入った女に心臓が跳ね上がる。
こいつは・・・・・・誰だ?
一目見て、関わってはいけないような気がした。
湧き上がるこの感情・・・・・・
触れられている手が熱くて・・・
組織の中では不必要な感情だと判断した。
「触るな」
「・・・・・・・・・え?」
ウォッカと一緒にいるということは、コイツの女か?
こんなこと一度もなかったが・・・・・・珍しいこともあるもんだ。
ソイツを睨むと酷く傷付いた表情に変わる。
「ジン・・・あの・・・っ」
「チッ・・・ウォッカ、てめぇの女を連れてくるな」
・・・何だ?
前にも言ったことがあるような・・・。
いつ、どこで・・・誰に言ったのか・・・。
思い出そうとすると頭が痛くなる。
「あ、兄貴・・・?ミモザですぜ・・・?兄貴の・・・」
「は?ミモザ?誰だよ・・・新入りか?」
ミモザ?俺の・・・・・・何だ?
思い出せない。
ということは、俺には必要ない記憶・・・
考えるだけ無駄だ。
ミモザという女をできるだけ遠ざける為、俺の前に現れる度に突き放す言葉を浴びせた。