第10章 あなたは誰?
「ミモザ・・・・・・ここにもう一度付けろ」
「・・・ふふっ。昨夜たくさん付けたのに・・・」
「いいから黙ってやれ」
「はい・・・」
言われた通り、ジンの顎裏を強く吸って印を残す。
消えないようにと昨夜も何度も吸い付いたのに、彼はまだ足りないと言う。
同じ場所に付けているため紫色になってしまっているけど・・・痛くないのだろうか。
「んっ・・・・・・すごい、くっきり付いてますよ」
「あぁ。・・・お前は胸の先にするか?」
「や、ん!待って・・・そこも昨夜たくさん・・・っ!!」
ジンの体力は尋常ではない。
常に触れられる距離にいて、ずっといやらしい手と唇が私の身体を這い回る。
──全身、彼の所有物だらけだ。
「続きは移動が終わってからだな」
「・・・・・・はい」
ジンと2人で暮らせると思ったら・・・ドキドキして一睡もできなかった。
こんな形だが、好きな人と2人だけの家というのは乙女心をくすぐられる。
「ミモザ、目的地に着いたら聞きたいことがある」
「え?何ですか?」
「着いたらと言っただろ」
「え・・・気になります・・・・・・」
今聞いてくれてもいいのに・・・。
改まって言われると余計に気になって仕方がない。
本人は目的地に着くまで口を割らないと言わんばかりの表情で。
それならばと早急に部屋を後にし、ウォッカが待っているエントランスへ足を進めた──
「おはようございやす。手筈はすべて整ってやすぜ」
「おはようございます。ありがとうございます・・・何もかもすみません・・・」
「世話になった」
──────え?
世話になった?
今・・・ジンが言ったの?
彼が労いの言葉を掛けるなんて・・・
ウォッカも驚愕して目と口が大きく開いている。
「ジン・・・・・・熱ありますか?」
「バカなこと言ってるなよ、行くぞ」
ふん・・・っと背を向けたしまったが、頬を赤くして照れている姿が愛おしい。
これからのことは何も決めていない。
今はジンの隣にいられる幸せを噛み締めながら彼の後に続いた。