第9章 渡さない ※
────ミモザの視界にバーボンを入れたくなかった。もちろん、その逆も。
ミモザは肯定も否定もしなかったが、2人が男女の関係であったことは確実で。
バーボンと切れてから俺の元へ来た・・・と考えて間違いはないだろう。
俺を選んだのなら、もう二度と関わらせたくない。
同じ組織内にいようとアイツのことは信用していないからだ。
「んっ・・・・・・。あ、付きました!」
キスマークを付けたいがハイネックや髪で見えない・・・と1人でブツブツ悩んでいたミモザ。
ようやく決めて吸い付いた場所は、顎裏。
誰からも見えなそうだが・・・・・・本人は満足そうに頷いているからまあこれで良いのだろう。
苦戦している間に甘い香りを堪能できたため、こちらも満足だ。
「嬉しい・・・・・・」
付けた印を指でなぞりながら、照れたように微笑むミモザを・・・・・・一生閉じ込めておきたいと思った。
「はぁ・・・。すみません、そろそろ・・・ギムレットに連絡してきますね」
「あ?あれは必要ねぇって言っただろ。他の奴に任せておけ」
「そうしたい気持ちもありますけど・・・ベルモットに頼まれたので・・・」
俺よりもベルモットの言うことを聞くのか?
気に入らねぇな。
「一応・・・任務は頑張っているので・・・彼女に銃は向けないでくださいね?ギムレットは、ジンのこと・・・・・・あ・・・憧れてる・・・みたいで・・・」
顔を曇らせてまであの女を庇うなよ。
あの時は俺たちの邪魔をした煩い女を黙らせる為にしたことで、本気で撃つつもりはなかった。
コイツの方が怯えていたから・・・出したことを多少悔いている。
「俺はお前以外に興味はない。気にするだけ無駄だ。どうしても不安になるなら俺に何でもぶつけてこい」
「ジン・・・。はい・・・ありがとうございます!」
俺にはお前しかいない。
今も・・・これから先も、何があっても。
頬を染めて瞳を潤ませているミモザに気持ちが昂り、身体を寄せて口付けようとした時だった──
スマホが鳴り、画面には・・・"ギムレット"。
「あ・・・・・・すみ・・・んんッ!」
一度ならず二度までも・・・。
申し訳なさそうな表情のミモザに謝る隙を与えないよう、唇を塞いだ。