第4章 Virgin Complex【ミケ】*
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「紹介するよ。企画開発チームの・だ。」
「宜しくお願いします。」
ハンジに促されるままホワイトボードの前に立たされた彼女は、静かに挨拶をした。
の事はもちろん知っている。確か中途採用で入社して三年目くらいだったか。因みに個人的に知っている訳ではない。課は違えど同じ部署だ。飲み会や社内で何度も顔を合わせている。
しかし、人を外見で判断するのは失礼なのは承知だが、彼女が処女というのは少々信じ難い。身だしなみは非常に整われており、初めて会った時から清楚な美人だと思っていた。恋人だって、今までいたのではないだろうか。
「、君には新商品の開発にあたって重要な役割を担って欲しい。たった今、その企画が通った所なんだ!」
「わぁ…!おめでとうございます!私で良ければ、何でも協力します!」
なんてことだ。
察するに、彼女は何故自分がここに連れて来られたのか知らないらしい。知っている側の俺たちは頭を抱えるしかなかった。
ハンジは彼女の右手をとり、自身の両手で包み込んだ。
「企画名は“処女喪失体験キット付きオナホール(仮)”だ。これはあくまで提案なんだけど、君の大事にしてきた処女を完全に再現させてほしい。」
俺たちからは彼女の横顔しか見えない。だが、目が見開かれ
ハンジの言葉に驚きの余り声も出ないという様子だった。無理もない。いや当然だ。自分が処女である事を暴露され、商品開発の為にそれを使いたいと言われて驚かないはずがない。
ああ、もう見ていられない。彼女の心情を考えると胸が痛くなる。きっと泣いて逃げ出してしまいたいだろう。横顔でも分かるくらい耳まで真っ赤だ。
「、断って良いんだぞ。ハンジももう止めろ。こんな事あってはならな───」
「やります。」
彼女の言葉は、まるで戦場に現れた救世主のように敢然たるものだった。その真剣な瞳は真っ直ぐハンジを捉えており、嘘偽りのない発言だと見て取れる。
「っありがとう!」
「いや待て。取り返しがつかなくなるんだぞ?」
俺は彼女達の傍に行き、の肩に触れた。
正面から見る事のできた彼女の瞳は、少し潤んでいるようにも見える。やっぱりイヤなんじゃないか。俺が何とかして止めるしかない。