第4章 Virgin Complex【ミケ】*
ここはパラディアイランド株式会社。
この国では数少ない玩具──所謂、"大人のおもちゃ"を専門で作っている会社だ。AV業界などから委託される事もしばしばあるため、我社の業績は落ちることはなく安定していた。
しかしここ数年の業績は僅かに右肩下がり。
SNSの普及で誰もが簡単に連絡が取り合えるようになった現代、独りで使用する玩具よりも避妊具の方が需要が高まっている。
もちろん我社も避妊具は開発している。それもそこそこの種類を。
それこそ消費物の為常に一定数売り上げてはいるが、何処かで業績をどうにか上げなくてはならない。その為に何か話題性の高い新商品の開発が求められているのだ。
そんなある日、午後から企画開発チーム課長のハンジから新商品の企画案会議が突然予定された。
「やあミケ、お疲れ様。来てくれて嬉しいよ。」
「お疲れ様ですミケ課長。こちら今回の資料です。」
「お疲れ。ありがとう、モブリット。」
第一会議室に入ると、既にハンジと彼女に振り回されている企画開発チームのモブリットがいた。
そして俺が席に着いたとほぼ当時に、マーケティング部長のエルヴィンと次長のリヴァイが入室した。
全員と挨拶を交わし、俺と同じように資料を受け取り着席する。
「よし、全員揃ったね。それでは、今回は新商品について企画させてもらうよ。」
どうやら集められたのは広報チーム課長の俺を含めたマーケティング部の上層部だけらしい。提案される新商品は企画開発チームでの会議を通ってきたという訳か。
あまりにも唐突に予定が組まれた為、本当に企画なのだろうかと少し疑っていたのだ。
「皆も知っての通り、最近は我社のメイン商品である玩具類の売上が悪い。そこで私が提案したいのがこれなんだけど…次のページをめくって欲しい。」
ハンジの指示通り、俺たちはページをめくった。
上司に見せるには如何なものかと思うほど拙いオブジェクトが挿入されたページが広がり、そこにはデカデカとこう記入されていた。
“処女喪失体験キット付き オナホール(仮)”
「しょじょそうしつたいけんきっとつきおなほーるかっこかり。」
文字をそのまま読み上げたのはエルヴィンだったかリヴァイだったか。
「そう。皆は“ロリコン”とか“処女厨”という言葉を知っているかな?」