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【進撃/短編集】Seelenwanderung

第3章 好機な誘惑【エルヴィン】*




春の訪れを感じる。
最近は夜も肌寒くなくなり、植物が意気揚々と育っている。



雪が降る時期が過ぎたら、調査兵団は壁外調査のシーズンに入る。

そして団長ら幹部達は、予算会議により割り振られた税だけでは壁外調査は実施できなくなった為、不定期に開催される貴族パーティーに招待してもらっては融資を受けられるよう愛想を振りまいてくるのだ。


それが今夜も行われていた。



俺は持ち前の頭脳を活かして、団長の補佐という役を正式にではないがさせてもらっている。
しかし今回の夜会へは連れて行ってもらえなかった。
若干不服ではあるが、夕方大人しく幹部達を見送った。





見送りのあと俺は夕食を済ませ、団長室を借りて本を読み時間を潰していた。
兵舎に戻るよりも幹部達の帰りをいち早く気づける為、ここを選んでいる。
もちろん、仮ではあるが補佐役の俺は団長室を使う権利が与えられている。


出発してから五時間が経とうとしている。
そろそろ戻ってくる頃か。
丁度本を読むにも目が疲れかけていたので、外で待つことにしよう。


団長室の扉を開けると、スっと澄んだ空気が鼻を冷やす。

今日は少し肌寒いみたいだ。

しかし夜空には幾つもの星が瞬いており、世界の美しさを際立たせる。


背伸びをしながら石畳の外廊下を歩いて門へ向かう。

見張りの新兵が数人、俺に気づいて敬礼を向ける。
それに手を挙げて応えた。

門に着くと松明の明かりの無い外は闇に包まれている。
この本部は町から離れた山奥に位置する為、町の灯りは木々に遮られるのだ。

団長らが戻ったらなんと気の利いた言葉を投げかけようか、などと考えているうちに馬を走らせる音とランプの灯りが微かに見えた。

どうやら戻ってきたみたいだ。

俺は後ろで手を組み、馬車を待ち構えていたが戻ってきた幹部達の様子は想像を絶する物だった。



「エルヴィン!ちょうど良かった!手を貸してくれ!」


最初に降りてきたのはシャーディス団長だったがとても慌てている様子だった。
その後ろから降りてきたのは第一分隊長と、その腕に横抱きにされた分隊長だった。



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