第25章 新しい生活※
あれから、ギリギリ最後の時間の新幹線に間に合ったイレイザーヘッド、かっちゃんと私は数時間かけて帰路に着いた。
駅前で2人と別れて行く当てもない足を動かす。
『......。』
さてどうしたものか。駅前に聳え立つ大きな時計塔を見ればまだ日付が変わる前。
帰る、と言ってもどこへ?ここからならアジトも遠くはない。けれどヒーローが押しかけたアジトに弔くん達が戻るだろうか。
最悪の場合野宿か......。とりあえずアジトの様子が気になるので、ビルの屋上を転々としながらアジトへ向かった。
『はは、だよね。』
ビルの屋上から私たちが拠点にしていたアジトを眺める。壁には大きく穴が開けられていて中のバー部分が丸見えだった。
ヒーロー達と戦った痕跡だろうか、道路やビルの壁には焼け跡のようなものがちらほらあった。
人はいないものの、周りには立ち入らないように規制線が張られている。
外壁の欠損部分から見えているカウンターを私はじっと眺めていた。
そこにはいるはずのない、カウンターの中でグラスを拭く黒霧、カウンターに並んで座る弔くん、荼毘、ミスターがお酒を飲む姿が見えた気がした。
後ろのソファでは私やトガちゃん、トゥワイスにスピナー、マグ姉と和気藹々している。
幻覚が見えてしまうほどに私はこのアジトでの生活を気に入っていて、大切でかけがえのないものだったのだったと今更ながらに知った。
踵を返そうとしたところで自分の背後に気配を感じた。
よく知っている馴染みのある気配だった。
たった今まで考えていた人物のものだ。
「探しましたよ。。」
振り向かない私に彼は言葉を放った。