第24章 vs■■■
「......今回の林間合宿は万全を期していたはずなんだがな...。いや、そんなの言い訳だな。2人とも守ってやれなくて悪かった」
駅まで歩く道のりで最初に沈黙を破ったのはイレイザーヘッドだった。それは真っ暗な夜空に消えてしまいそうなほど小さな声だった。
「...別にアンタのせいじゃねぇだろうが」
両手をズボンのポケットに入れてこちらもぽつりと呟くかっちゃん。
......そう。
イレイザーヘッドは悪くない。本来その謝罪はイレイザーヘッドの口からではなく私の口から出なきゃいけない言葉だ。
万全を期していた─────
はずだった。
いつだったか職員室の中でイレイザーヘッドとブラドキングの会話を偶然聞いてしまった日。
私が情報を漏らしたから......。全部私のせいなのに。
今、こうして2人の隣を並んで歩くことが許されないような気がして少しずつ歩く速度を緩めた。
やがてその後を追う形になった私は2人の背中を交互に見る。
『...ッ、ごめんなさい』
自分でも聞き取れるか聞き取れないかくらいの小さな声で呟いた。
面と向かって2人に言えないのは、自分の正体を知られるのが怖くなったから。卑怯でごめんなさい。ヴィランでごめんなさい。
たった一言に色々な感情を乗せて呟いた。
「ん?どうした。」
「てめ、チンタラ歩いてんじゃね!!終電なくなんだろーがッ!!」
心配そうな顔で私の元まで戻ってくるイレイザーヘッドと怒鳴りながらも、戻ってきてくれるかっちゃん。
『ううん。なんでもないです。』
精一杯の笑みで返す。私今ちゃんと笑えているかな。
「......まだ足痛ェんか...」
『大丈夫だよ。さっき警察の人に軽く手当てしてもらったからもう平気。』
「だったらとっととその足動かして歩けや!!!」
「爆豪黙れ。近所迷惑だ」
「けっ!!!」
ずかずかと歩いていくかっちゃん。言葉は乱暴だけれど、ちぐはぐな言葉と行動のその中にちゃんと彼なりの優しさがある事を知った。
今日だけでヒーローの...いや、1年A組の本来ヴィランが触れてはいけない部分にたくさん触れてしまった気がする。
バラバラだった足並みが再び揃い、夜道には3人の影が伸びていた。