第23章 ただいま
相澤side
雄英高校ヒーロー科1年の林間合宿は最悪の終わり方だった。
こんなはずじゃなかった。
夜の静かな森に似つかわしくない、けたたましいサイレン音が鳴り響いていた。
赤い警光灯は俺や生徒達のいるこの場所を中心に、高速で円を描くように何度も周囲を照らしている。
ブラドの通報でヴィランが去った15分後に警察と救急隊が到着した。
生徒41名のうち、ヴィランのガスにより意識不明の重体15名、重軽傷者11名、無傷で済んだのはたったの13名。
そして行方不明者2名。
爆豪とだ。
爆豪については緑谷、轟、障子の目の前でヴィランに攫われたのを見たと3人から情報があったが、に関しては目撃情報一切ゼロ。
時間的に最後にの姿を見たのは俺という事になる。仮面女とやり合ってた時に、と洸汰くんを連れた緑谷が来たその時だ。
その後の消息が途絶えてる。もしかしたらもヴィランの手に攫われたのかもしれねぇと最悪の場合も考える。
「緑谷、もう一度聞くが俺に洸汰くんを預けたあと、マンダレイの元へ行くまでの間でを見てないか?お前を追いかけて行ったはずなんだが。」
「そんな......さんもッ...ごめんなさい。僕...見てないです......ッ」
怪我のダメージもあるだろうが、
目の前で幼馴染が攫われた事に完全に意気消沈しちまっている緑谷。震える声を、怒りを、抑えるようにして声を絞り出したように見えた。
「そうか」
そう言って、肩を落とす緑谷の背中を救急車の中へ押し入れる。緑谷の背中に添えた自分の手も酷く震えている事に気づいた。
......クソ
頼むから、も爆豪も無事でいてくれ......
あの時、緑谷を追いかけるの背中を意地でも止めていれば......
怒鳴ってでもを施設に戻してやれば......
もっと慎重に考えなくてはいけなかったのに、とにかく行動しなくてはいけない、と俺が洸汰くんを施設へ届けた。
人というものは、慎重にことを運ぶべき時に限って、行動を急いでしまうのかもしれない。