第21章 林間合宿 2日目
翌日
まだ朝日も登らない明け方、私たちは重たい瞼を擦りながら施設の外に集まっていた。四方からは気の抜けた欠伸をする声や、伸びをしている声が聞こえてきた。ちらほら立ったまま寝ている生徒もいる。
「おはよう、諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の個性の強化および、それによる仮免の取得、ヴィランに立ち向かうための準備だ。心して臨むように」
「「「はい!!!」」」
イキイキとしたイレイザーヘッドの声に生徒たちも鼓舞されたかのように、気合の入った返事をした。
よくもまぁ、こんな時間からそんな大声だせるな...。
全員で森を少し歩き拓けた場所に出ると、イレイザーヘッドが生徒1人1人にそれぞれの個性に合った訓練方法を指示し始めた。
私を含め生徒21人の弱点、伸び代をよく分析していて且つそれぞれに合ったトレーニング方を指導するのだからさすがプロヒーローだと思った。敵ながら称賛の拍手を送りたくもなる。
私はというと、近接戦闘の尾白くんと変わりばんこで硬化した切島くんにひたすら攻撃を仕掛けるというシンプルなトレーニングだった。
「ひぇぇー!!!おめぇスッゲェなぁ!!俺ほとんど押されっぱなしだったぜ....ッ.....!!」
『切島くんの硬化もさすがだね。』
地面に足を伸ばして座り後ろに両手をついた切島くんが息を切らしながら私を見上げ言った。流石に硬化で硬くなった切島くんに素手で攻撃をし続ける事は、岩を殴っているようなものなのでこちらも痛い。
足も手もヒリヒリする......。
「おい尾白も戦ってみろって!!スッゲェから!!」
「、俺もお願いしていいかな?」
『もちろん。』
私と尾白くんの間に一定の距離を作る。そして私も尾白くんもほぼ同時にお互いに向かって駆け出した。
ひたすら私に攻撃を仕掛けてくる尾白くん。全て躱すものの、なかなか攻撃を出せない。
尾白くんは尻尾も身体の一部。
なら、尻尾も考慮して間合いに入らないといけない。
一見、初見の私には不利に見える。
けど───
『んっ.....!!』
「ぐあっ......ぐっ...!」
逆に言えば尻尾があるからこう動くだろうって予測も立てやすいのだ
尾白くんの顎を下から抉るようにして蹴りを入れた。