第5章 看病※
ぼんやり目が覚めるとそこはいつものアジトだった。
どうやら私はソファで横になっていたらしい。
腰らへんに違和感を覚え、目線だけ下にやれば床に座ったままの弔くんが、上半身だけを私の腰あたりにもたれ掛かるようにして気持ちよさそうに寝息を立てている。
『弔くん...』
普段絶対に触らせてくれなさそうな弔くんのふわふわの髪の毛を撫でてやる。
『ふふっ...弔くん、寝顔は子供っぽくて可愛いなぁ。』
こんな事弔くん本人に言ったら怒られそうだけど、と心の中で付け足しながら指先で弔くんの頬を撫でる。
「、起きていましたか。」
『ひっ!!』
突然背後にあるバーカウンターの方で黒霧の声がしたので弔くんを撫でていた手を咄嗟に引っ込めた。
『いった...』
黒霧にも手助けしてもらい、鉛のように重い上半身を起こすと、腹のあたりと足に刺すような激痛が走り顔が引き攣る
『黒霧...私...』
「丸一日目が覚めないので心配しました。脳無との戦闘が終わった直後すぐに気絶してしまったんですよ。......だいぶ派手にやられましたね」
未だにすやすや寝ている弔くんを起こさないようにか、小声で話す黒霧。彼のこういうところがとても好きだ。
お腹と足首を見ると丁寧にぐるぐると包帯が巻かれていた。
小さなかすり傷にまで治療が施されているのをみると黒霧が手取り足取り面倒を見てくれていたのが分かる。
『これ全部黒霧がやってくれたんだね、ありがとう。』
「いえ、その包帯も全部、死柄木弔がやりました。ただ、お腹の方は場所が場所だったので......その...咎めないでやって頂きたいのです。」
『そっか...弔くんが...』
彼の優しさがまっすぐ届いて、胸に温かいものがジワジワと突き刺さるようなそんな感じがした。ありがとうね、そう言いながら寝ている弔くんの頭を再び優しく撫でる。
「んっ...」
ゆっくりと開いた燃えるような2つの赤い瞳が私を捕らえた。
『ごめんね、弔くん。起こしちゃった...』
「よぉ。.........悪かった。すぐに止めてやれなくて」
『いいのいいの。私が脳無ちゃんと遊んでみたかったんだし。それより、弔くんこれありがとう。』
包帯を巻いてある箇所を指差しながら、私は弔くんに向かって微笑んだ。