第4章 作戦
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弔くんの指示と同時に脳無ちゃんは瞬く間にこちらへ駆けてくる。
間合いに入らせるな隙を与えるな
『よしっ』
脳無ちゃんが右腕を大きく振り上げた一瞬をつき、跳躍して空中で脳無ちゃんの背後を取った。
『っ!?』
喜んだのも束の間、私が攻撃態勢に入る前に脳無ちゃんは瞬時に振り返り、右の拳を下から抉るようにして私のみぞおちに入った。
『うぅ...ゲホッ...ゲホッ...いいね...脳無ちゃん最っ高だよ!』
前に倒れかけた体を両足と、右手を地に着き辛うじて持ち堪える。
『弔くん...黒霧...邪魔しない...でねっ』
「女がやられてる所を黙って見てる趣味はない」
「もしもの時は止めます」
弔くんと黒霧がなにか言ってるがそんなの今は聞こえない。
再び脳無ちゃんへ走り出し、脳無ちゃんの一発を低姿勢で躱し
咄嗟に体内に隠し持っていた短剣を取り出す。
「ハッ...あいつ物騒なもん隠しもってんなァ、感情移入してた割に殺す気満々じゃねぇか」
クツクツと笑いながら傍観している弔くん
手の中でぐるりと短剣を回して構え直し、低姿勢のまま脳無ちゃんの、足元から顎にかけて短剣を振り上げる。が、脳無ちゃんも咄嗟に巨体を翻し、私の切っ先は脳無ちゃんの顎先ギリギリの空を切る。
『超再生...超チートじゃん...』
切ったさきから、繊維が戻っていくように縫合されていく脳無ちゃんの切り傷
『もうぶっ叩くしかないってことね...』
武器は通用しない、そう判断した私は短剣を体内にしまい再び猛スピードで脳無ちゃんへ飛び掛かり、脳無ちゃんの頭上をとる。
だが空中で脳無ちゃんの顔面に放った踵は脳無ちゃんの腕に塞がれてしまう。
『っんでこれを避けれんの!!』
そのまま脳無ちゃんに足首を掴まれてしまった
『っっ!!』
なんなのこの馬鹿力
思わず顔を歪める
足首の骨が軋んで悲鳴をあげているようだ
『あぁぁっっ!!』
「死柄木弔、これ以上は!」
「あぁ。脳無、やめろ。」
機能停止した脳無が掴んでいた私の足首を離しそのまま地面に落ちそうになったところを、黒霧のワープに入り気づいたら弔くんの腕の中で横抱きにされていた。
「わりぃ...もっと早くに止めてやればよかった」
煙のように意識が薄れていく中、初めて弔くんの悲しそうな声を聞いたような気がした。