第1章 初めまして先生
某施設にて
『………おじさん、だあれ?』
「ぼくは、君を助けに来たんだ。可哀想だねえ。辛かったねえ。君はその個性のせいで誰からも愛されなかった。誰からも助けてくれなかった。手を差し伸べてくれなかった。でも大丈夫。ぼくがいるからね。」
スーツを着た大男は少女と目線が合うように体を屈んでギュッと少女を抱きしめる。
初めて人から抱きしめられた少女は色々な感情がふつふつと込み上げ8歳にして初めてぽろぽろと涙を零した。
『あ...たたかい...』
「ドクター。この子はぼくが引き取るよ。いいね?」
スーツを着た大男は立ち上がり少女の頭に手をポンポンと置きながら言う。
「フォッフォ…いいじゃろう。旧友の頼みは聞かんとなぁ。ここに置いといても宝の持ち腐れじゃったからのぉ」
禿頭に異様なメガネをつけた老爺が不敵な笑みを浮かながら言う。
「この子の個性は?」
「個性届けでは"セーブ"となっておる。」
「セーブ?」
「そうじゃ。簡単に言えば、物や衝撃だったりを一時的に彼女の体内に保存できる個性じゃ。保存したそれらは再び取り出し、放出する事も出来るだろう。」
「ほお...」
「あとは少し、ワシがイジっておる」
「イジる?」
「あぁ。この個体はすごいぞい。ワシの肉体改造実験の負荷に耐えたただ1人の人間じゃ。普通ならその負荷に耐えられずにそのまま死んでしまったり、物言わぬ人形のようになってしまうのだがなぁ......この子は見ての通り。」
「ほお。キミ、名前は?」
スーツを着た大男が再び少女の前に屈み小豆色の髪の毛を撫でながら聞く。
『ん...............。』
「か。良い名前だ。、キミはもっと強くなれるんだ。僕と一緒に来てくれるかい?」
『私.........もっと強くなりたい...。』
少女はコクコクと頷き大男の目を見ながらそう言った。