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紫の瞳をしたラスボスは今日も怠惰を謳歌する

第4章 ぼんの正体


「やっぱり、倒すのはやめるよ」
 そう言った俺の声は、エンダーマンすらいないこの島中でしんと響くように冷たかった。そういえばエンドってこんなに寒かったんだと今更気付いて目を上げた。宇宙色の見えない天井が、俺の頭上でキラキラと瞬いた。
「そうね、ここにはエンドラはいないもんね」
 そう言ってフェニックスは片目をこちらへ向けた。と言っても、体の大きなフェニックスは、俺のところからでは横顔しか見えなかったので、そういう言い方になるのだが。
「けど、エンドラはどこに行ったの?」
 エンドラのいないエンドなんて初めてだったので、俺は好奇心のままにフェニックスに訊ねてみた。
「さぁ? 俺がここにいた時は誰もいなかったよ」
「エンダーマンも?」
「エンダーマン? そういえばいないね」
 フェニックスもようやくここの異常に気付いたのか、頭を上げて辺りをキョロキョロする。やはり、このエンドは何かがおかしいのだ。
「ねぇ、フェニックス」
「フェニックスなんて呼ぶのはやめてよ。俺には俺の名前があるんだから」
 そう言ってフェニックスは俺をじっと見下ろした。見下ろされているのに、不思議と威圧感はなかった。それはフェニックス特有の紫光りする鱗のせいだったのか、それともその紫色の瞳が優しく見えたからかどうなのかは分からない。
「じゃあなんて呼んだらいいの?」
 俺は訊ねた。フェニックスはこう答えた。
「ぼん。ぼんじゅうるのぼんだ」
「ぼんじゅうるのぼん?」
「そ、かっこいいでしょ?」
「うーん、まぁ……」
 俺は曖昧に返事をしたが、フェニックスのぼんはヘラヘラと笑った。思ったよりあどけなく笑う声に、俺は名前のセンスなんてどうでもよくなり思わずつられて笑った。
「ねぇ、エンドシップまで行ったことあります? ぼんさん」
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