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紫の瞳をしたラスボスは今日も怠惰を謳歌する

第3章 クリスタルを壊して


 そうして俺は弓矢とエンパを使ってクリスタルを壊し終えた。その間喋るエンドラは、ゆるりと翼を羽ばたかせて周りを飛び回っているだけ。こちらの行動を妨害してくることもないので、さすがに俺はエンドラに訊いてみた。
「ねぇ、攻撃しなくていいの?」
 すると、エンドラが近付いてきたので今度こそ攻撃されると身構えたが、そんなことは一切ないまま俺の目の前に降り立つとまた首を傾げた。
「え、なんでよ……? アナタ、俺に何かした?」
 質問を質問で返されて困惑したのは俺の方だった。確かに、俺はエンドラに今は何もしていなかったし、エンドラも俺には何もしていない。
「けど、エンドラは悪いやつなんでしょ? いつも倒してるんだけど」
 俺が更に質問を投げると、ああ、エンドラのことねとまるで他人事のように話を続けた。
「よく悪いやつだって言われてるよね。だからわざわざアナタはここに来たのね」
「えーっと……?」
 話の辻褄がどこか合わない気がした。この状況を理解しようとさらに質問を試みようとしてみたのだが、エンドラは再び島の中心で体を丸め、翼を畳んで頭を垂れたので、また寝てしまうのではないかと俺は掛ける言葉を変えた。
「えーっと、そこで寝られると困るんですけど……」
「え、なんで?」
 少しだけ頭を持ち上げ、エンドラがそう訊いてきた。なんでって、戦いづらいし、自分の家に帰れないし困るからなんだけど。
「じゃあ倒していいの?」
「え、誰を倒すの」
「エンドラを」
「エンドラを……」
 こちらの言葉を繰り返すエンドラは、どうも違和感しかなかった。何かがおかしい。だが、その何かがよく分からないと頭を捻っていると、向かい合うそいつがようやく答えを出した。
「ああ、そういうことか!」閃いたようにそいつは喋った。「アナタ、俺のことをエンドラだと思い込んだのね、あー、ようやく意味が分かったわ」
「え……?」
 戸惑う俺をよそに、そいつは姿勢を正すようにその場に座り直した。それからゆっくりとわずかに体を持ち上げると、そこから見たこともない程長く美しい紫の飾り羽が何本も現れて俺は息を飲んだ。
「残念だけど、俺はエンドラでも、ましてやドラゴンでもないんだよね」そいつは言葉を続けた。「俺はフェニックス。不死鳥なんだ」
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