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紫の瞳をしたラスボスは今日も怠惰を謳歌する

第13章 再会


 翌朝だった。
 こんなに同じ世界に留まってることなんて早々ないぞと思いながら真っ先に外に飛び出すと、そこに置いてあった黒いタマゴにヒビが入っていることに気が付いて俺はすぐに駆け寄った。
「生まれる……?」
 フェニックスが復活することを果たして生まれるというのかは置くとして、俺は早まる気持ちをグッと抑えてタマゴの行く末を見守った。
 パキパキというわずかな音。タマゴのヒビはどんどんと多くなってきた。
 俺は思わず固唾を飲み込んだ。パキリと、紫色の鉤爪が見えて俺は何も考えずに手を伸ばした。
 次にはもう一つの鉤爪が顔を出し、俺は気付けばタマゴの殻を剥がす手伝いをしていた。ゆで卵の殻を剥がす時より慎重に、ゆっくりと。
 やがて顔まで現れて俺の手は止まった。紫褐色の鱗に囲まれた瞳が少しずつ大きく見開いて、その内に丸い大きな月が俺を見据えた。
「ぼんさ……」
 上手く名前が呼べたかは分からなかった。しかし、タマゴの中身にいたソイツは自ら殻を割り出して、まだ湿ったばかりの翼を羽ばたかせて首を振った。
 こうして見ると、その生き物はまるで大きいだけの鳥だった。長い尾にはあの時見たような飾り羽はまだなく、顔も小さくてあどけない。
 俺はなんの疲れなのかその場でへたり込んでしまった。そこにタマゴの主の嘴が近付いてきて俺に頬ずりをした。
「どうしたのよ、おんりーちゃん。腰抜かしちゃった?」
 と喋りながら。
 感動というよりは、あの大きさでこの声に聞き慣れていた俺にとってはなんだか可笑しくて。はははって笑うと、本当にどうしちゃったのと言いながらもぼんさんも笑った。その笑い声は間違いなくぼんさんで、俺はようやく安堵感を覚えた。
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