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紫の瞳をしたラスボスは今日も怠惰を謳歌する

第9章 リセットボタン


「だから斧が嫌ならベット爆破でいいよ。エンドラもいつもそれで倒されてきただろうし、俺がここのラスボスになるよね?」
「まぁ、そうかもしれないけど」
 サクッと倒すつもりだったから、俺はベットは持ってきてはいなかった。俺は手にしたままの斧の柄を握り締めることしか出来なかった。
 俺がそうして何も言わずに突っ立っているのが不思議というかのようにぼんさんは目を開けた。次にはどうしたのと聞いてくる始末。俺が躊躇っている理由が、分からないとでも言うのだろうか。
「ぼんさんを倒したら……ぼんさんはどうなるんですか……?」
 おそるおそる聞いた。意外にも俺の口調は冷静で、ただ周りの空気だけがしんっと冷たく肺の奥で突き刺さるみたいだった。
「そりゃあフェニックスだからね、また復活するよ」
「本当に……?」
「ほんとほんと。ただちょっとの間、タマゴになるだけだから」
「タマゴ……」
 フェニックス自体非現実的存在なのに、復活するタマゴがあるなんてにわかには信じられない。
 しかし、ぼんさんは何か閃いたように顔を持ち上げて、明るい口調でこう言うのだ。
「そうだ、おんりーちゃん。もし良かったらだけど、俺がタマゴになっていたら、一緒に外の世界に連れて行ってよ」とぼんさんは言葉を続ける。「エンドも静かで寝やすいからいいんだけどさ、他はなんもないから飽きちゃって」
「それが遺言ですか?」
「そうね、それが遺言」
 へへへっと笑うぼんさんは、まるで寂しいとか怖いとか、そういう気持ちを全部くるめて隠しているみたいだった。
 そうか、このフェニックスは、いつもこうして笑って誤魔化してきたのだ。自分の負の感情も、本当の気持ちも。
「……絶対また戻ってきます」
「ああ、ありがとね。でも無理は……」
 ガンッ!
 鈍い音がした。
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