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紫の瞳をしたラスボスは今日も怠惰を謳歌する

第7章 不死鳥でも


「ちょっと、簡単に死ぬなんて言わないでよ」
 ぼんさんは長い首を下ろして俺の顔を覗き込んだ。紫の瞳が俺をじっと見据えて、本当に綺麗だなと思った。
「フェニックスでも、死ぬのは怖いんですか?」
 好奇心でつい訊いてしまったことだった。その瞳に見取れてしまって、つい。
「そりゃあね。落ちるのは怖いし、死ぬ時は痛いし」
「ああ、なるほど」
 ぼんさんがあまりにも明るい口調で答えるから、失礼なことを聞いた気にはならなかった。
「命は軽くないのよ? フェニックスの俺がこう言うんだから」
「けど、このままじゃ帰れないんで」
「ああ、そうか、そうよね。エンドラいないから、出口もないってことね」
「はい」
 俺のこの返事を最後にぼんさんは空を仰いだ。何か考えている様子だったが、答えが見つからないのか、喉の奥で唸り声のようなものを上げた。
「そっかぁ。おんりーちゃんとはここでお別れか……」
 とぽつんと呟いて。
 また会えますよ、なんて言おうかと思ったが俺は口を開けなかった。俺はいつも新しい世界で新しいエンドに行くのが日課だ。何度その日課を続けたら、もう一度ここと同じエンドに来ることが出来るだろうか。いや、その可能性は極めて低いだろう。
「ぼんさんはここにどうやって来たんですか?」
 わずかな希望で俺はそう聞いてみたが、実は……とぼんさんは迷子でここに辿り着いたことを話してくれた。つまり、ぼんさんがエンドに来た出入口も、どこか分からないということだった。
「でもさ、こうして誰かと話すことが出来て楽しかったよ。まさか人間と話すことになるなんて思わなかったけどね」
 少し寂しそうに話すぼんさんは、それを隠すかのようにはははっと笑った。
 このフェニックスは、どこか暗い話をしていても、その明るい声と口調が周りを照らすみたいでこちらにあまりマイナスな印象を与えなかった。
 俺はそう思ってしまうくらいには、ぼんさんというフェニックスを好いていたのだ。絶対言葉にはしないけど。
 このまま別れてしまうには、惜しい気がして。
「最後に、一緒に並んで飛びます?」
 と俺が提案すると、ぼんさんは目を大きく見開いてぽかんと口を開けた。
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