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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第3章  変わらないもの(七海夢)※



 「なんで…

 …なんっで、帰ってきたの…ッ」



 七海の腕を振り解き離れようとした。
しかし、いとも簡単に再び七海の腕の中に閉じ込められ、それは叶わなかった。


 「離してっ」

 「離しません」


 七海のはっきりした声に、今は苛立ちが募る。


 「離してってば!」

 「離せません」


 七海に引き寄せられた際、不可抗力で彼の胸に置いてしまった片腕に、グッと渾身の力を入れる。


 「……ッ―――離せ!!!」

 ドンッ


 怒り任せに七海の胸を力いっぱい叩いた。
七海はそれを止めることも避けることもせず、只々受入れた。


 「なんで…ッ!なんで戻ってきたの?!」


 黙ってされるがままの七海に、腹が立つ。
武闘派ではないが、呪術師をしてきたんだ。それなりに力のある私がどれだけ叩いても暴れても、七海はそれ以上の力で私を抱きしめ続けた。


 「優しすぎる七海に!
 呪術師なんて向いていない!!」


 しかし、一番腹が立つのは。
七海を突き放しきれず、彼の抱擁から離れられない、自分自身の意志の弱さだ。


 「もうあんなっ…
 七海の痛々しい姿は、見たくないっ…!!」


 ずっと胸に溜め込んでいた気持ち。
誰かに、ましてや七海本人に言うつもりなんてなかったのに。耐え切れず言ってしまった。
 七海を叩いていた腕は力が抜け、重力に従いずるずると落ちていく。


 「もう逃げません」

 「逃げてよっ…!!こっち来ないでよ!!」

 「私も貴女と同じで、結局は逃げれなかったんです」

 「そんなこと、ないっ」


 口では否定するも、その通りだなと頭の四隅で思ってしまった。嗚呼、認めたくないのに…


 「大切なものは、初めから此処にあったんです」


 昨日、伝えたじゃないですか。と言う七海に「…知らないよ、そんなの」と精一杯な声量で呟く。


 「……はぁーーーーーーーー」

 「え、な、なに…??」


 すると頭上から、とんでもなくワザとらしい嫌な感じの。今までのシリアスな空気を吹き飛ばす七海の重い溜息が吐き出された。


 「酔っぱらいに真面目な話は駄目ですね」

 「は?ちょっ…?!」


 七海は抱きしめている手を離し、私の顔を両手で優しく包む。七海としっかりと目が合うように、顔をゆっくりと上げさせられた。





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