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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第3章  変わらないもの(七海夢)※



 だから、私は。
 あの頃の日々に囚われて―――ううん、自ら囚われ続けている。

 取り戻せないモノを捨てないために。



 「他人には捨てろと言うくせに、
 貴女は捨てずに苦しみ続けるんですね」

 「そ、んなの」


 七海だから言うんだよ


 「…ッ」

 そんな台詞を言える訳もなく、言葉を無理やり飲み込んだ。


 「あーごめん。支離滅裂だね、私!」


 目尻を下げて口角を上げる。
ほら、こうすると簡単に笑顔が出来る。女の武器を最大限に活かした、可愛く見える私の出来上がり。

 「お酒飲んでると駄目だね!」と、全部お酒のせいにした。片手のお酒はほとんど減っていないけど、そうじゃないとやってられない。
 黙っている七海を直視する事が出来ず、フラついているフリをして背を向ける。


 「辛くなったら、此処に来るの。私」


 嗚呼、私は何を話しているんだろう。口がペラペラと勝手に話し出す。
 酒缶を持っていない片手で、もう片方の腕を掴む。まるで自分自身を抱きしめるように。


 「……此処に、灰原に会いに来るの。
 灰原の死が、私の…ううん



 ―――私達の、原点だったから」



 他に縋るものもないしね、と心の中で呟いた。



 「灰原に、会いたいな…」

 「―――そうですね」

 「ッ」


 何故だろう。
七海のその一言が、肯定しているように感じてしまって、胸に秘めていた想いが溢れ出す。誰にも言えなかった、ずっと仕舞い込んでいた本音が、ポロポロと零れていく。


 「…夏油にも、会いたい」


 私は空元気で「夏油、どうしてるかなぁ」と言うも「どうでしょうね」なんて、いつもの調子で軽くあしらわれてしまった。
 それすらも嬉しいなんて。ああ、どうしよう。口が止められない。


 「これ以上、仲間を……
 硝子や五条を、失いたくない」


 言っちゃ駄目だ


 「あの頃に、戻りたい」


 これ以上、余計なこと言っちゃ駄目なのに


 「……そう、思いながら、呪術師して……―――ッ!?」


 “呪術師してるんだよ”
 そう言葉を続けようとした。

 俯いて、足元だけを見て。
行く当てもなく歩いていたため、いつの間に前方に居た七海にドンッと思い切り打つかってしまった。






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