第2章 後輩Nの苦悩(七海夢)
呪術高専に入学を決めたのも、スカウトされたから。
やり甲斐や生きがい等といったものを求められても分からない。なるべく面倒事は避けたい。
穏やかに過ごせれば良い。
そう思っていた、桜が咲く今日此の頃…だったのに。
「「入学、おっめでとー!!!」」
パパパパーンッ!
司会者男女の手からクラッカーが鳴る。
中身のテープや紙吹雪を頭から垂れ下げる羽目となる、入学初日。
パーティー用のとんがり帽子を被り“本日の主役”と書かれたタスキを肩に掛け、教室の黒板前に立たされている。
何だこれは。
「超☆新入生歓迎会を〜始めまぁす!」
「ありがとうございます!」
「…」
歓迎会とはいえ、新入生は自分を含めたったの2人。歓迎してくれる側も生徒4人、先生1人。
大量のぺーパーフラワーと折紙で作られた輪飾りが、華やかさよりも人数の少なさを際立てている。
「はいは〜い!
それでは自己紹介をしてもらいまーっす!」
「では!どうぞー♪」
(司会を務めるのは、あの五条家の…
もう一人の女子生徒は知らないな)
目の前の椅子に座っている男子は呪霊操術の、同じく座っている女子は反転術式の使い手だ。
「では、ふたりのお名前は〜っ?!」
「灰原雄です!」
五条家の人は同級生が被っていたとんがり帽子を奪い、いつの間にか被っている(それなら自分のを奪ってほしかった)。そして名前を言えと言わんばかりに、手作りマイクを自分の口元に突きつけてきた。
「七海、建人です…」
きっと、この中で一番面倒くさい人だ。
「自己紹介はこのくらいにして!
レッツ☆パーティ〜!!」
これから過ごすであろう教室で、お菓子やジュース、お弁当箱をどんどん開けていく。2年生も自己紹介をしているが噂で耳にしていたし、改めて聞く必要もない。
とりあえず手元に近いサンドイッチに手を伸ばし、口に運ぶ。
「!」
あ、意外と…
「美味しいよね!このサンドイッチ」
「えっと、」
(この女子の、先輩の名前は…)
正直興味ない。
彼女は五条さんや夏油さんのような実力もなければ、家入さんのように反転術式が使えるわけでもない。彼女から学ぶことは何もない、一般的な生徒だ。