第1章 報われない(五条/夏油夢)
《報われない》
※五条視点
好きな奴が、合コンに行ったらしい。
傑と面白がって問い詰めるも、内心はこれっぽっちも穏やかではなかった。
「ご…五条には関係ないじゃん!」
「関係なくはねーだろ」
キッツ。
好きな奴に「関係ない」とバッサリ切られるとか。表面上は笑ってるけど、笑エナイ。
「そうそう、私達はさくらを心配してるんだよ?」
「心配たって、そんな、子どもじゃあるまいし」
「そーだそーだ!お前が変な男に引っ掛かってメンタルやられたら、誰が慰めると思ってんだ!」
「硝子じゃないの?」
「お、おう」
それな。間違いね―わ。
そしてさくらはぽつりぽつりと合コンに行った理由を話し出す。なんだよ幸せになりたいとか意味わかんねー事言いやがって。
「今日も任務後に特大パフェ頬張りながら「幸せ〜(はあと)」って言ってたよな」
「そうそう。この顔周りの肉付きが幸せ太りの証拠じゃないのかい?」
傑とさくらのほっぺを突付いたり軽く引っ張ったりする。
「な"…何で太った時ばっか気づくの?!」
かぁぁっと頬を染め恥ずかしそうにするさくら。
やべ、可愛い。
「もちろん痩せたときも気づいてるよ」
「面白くもなんともねーから言わないだけだ」
「クズ!ほんっとクズ!!」
好きな子ほどいじめたくなるってホントなんだな。
コロコロ変わる表情が見ていて飽きない。硝子に話したら「小学生のガキかよ」って笑われた。
さくらが好きだ。
恋人同士になれれば、それはもう万々歳だ。
―――しかし、この関係が。
この日々が、楽しくて、大切で。
さくらと毎日こんな風に笑って過ごしていられるなら、このままでも良いと本気で思っていた。
―――――思っていた矢先に、これだ。
「……二人はさ、いいよ。クズだけど顔は良いし、頭いいし強いし、モテるし」
「「は?」」
え、ちょっと待て待て。
「今なんっつった??」
「モテるでしょ、五条と夏油は」
復唱して欲しかった台詞はそこではないが、まあいいだろう。