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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第1章  報われない(五条/夏油夢)



 「私ね、本当に彼氏が欲しいんだよ?
 応援してくれたっていいじゃん。

 …私達、それなりに親しいんだから、さ」




 放課後のゲーセンに誘ってくれるくらいなんだから、仲悪くないでしょう?

 さくらは意中の彼をチラリと盗み見る。


 (……はあー)


 好き、格好良い。

 私なんて眼中にないこともわかってる。
だから告白して当たって砕けるなんて馬鹿なことはしない。

 この好友関係が崩れるのが、何よりも怖いから。


 (一緒に居られなくなるなんて、考えられない)


 この恋はバレてはいけない。
 そう、絶対に。


 「……わっ、と!」


 さくらはぼんやりしながら五条と夏油に引き摺られていると、二人は突然走り出した。目の前には長い降り階段があり……ん?!



 「えっ、ちょ!か、階段…!!」

 「「…せーのっ!」」

 「ぎゃっ!?!」


 ふわっ

 身体が、重力を失ったかのように宙を舞う。
私は五条と夏油に両手を繋がれたまま、階段を飛んでいく。



 「い、いきなりジャンプ!というか、飛び降りないでよっ!!スカート捲れるっ!パンツ見えちゃう!!」

 「大丈夫だよ、私達は見えない」

 「そりゃ振り向かなきゃ見えないけども!周りに見えちゃう!!」

 「黒の見えパン履いて完全防備のクせに、見えるもんも見えねーよ」

 「ちょ、何で知ってんの?!」

 「「ははははー」」

 「ほんっっとクズなんだけどー!!!!」


 本当にどうしようもない。
こんなクズに振り回されて、楽しくて仕方ないなんて。

 チラリと彼の顔を見る。
楽しそうな、嬉しそうな顔しちゃってさ。本当にズルい。

 口が裂けても言えないけども、あぁ、やっぱりこうやって笑い合っているのが大好きだ。



「…報われないなあ」


―――もう少し、この恋に苦しめられてもいいかな、なんて。






〜おまけ〜


「しょーこー!!」

「おっ、さくら」

「内緒って言ったのに!どーして合コンのこと言ったのー?!」

「さあ?何ででしょうねー」


大好きなさくらを、どこの馬の骨かわからない奴に渡したくなかった、なんて。


(…口が裂けても言えないっつーの)


言えない想いは、蒸すタバコの煙と共に消えていった。



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