第1章 1.
桜の花びらがひらひら舞う。
なんてポエミーなことを言ってみるけど、私には似合わないな。
セミロングの黒髪をおさげ。
前髪は目元を隠し、さらに黒縁の眼鏡をかけている。
度は入っていない。
ただ、不細工な顔を隠したいだけ。
本当は、マスクもしたい。だけど、そんなことしたら完璧に不審者だと思う。
スカート丈は膝上ピッタリ。
曲がった背中を真っ直ぐにするつもりはまったくない。
ただ、地味に、目立たず、陰キャでいい。
平穏に過ごしたい。
でも、本当は…。
そんな私は先日烏野高校に入学した。
今日から高校生活が本番を迎える。姿は陰キャだけど、どんな生活になるのか、ワクワクする気持ちはみんなと一緒だと思う。
余裕を持って登校し、校門をくぐると、
「テニス部にぜひ!」
「吹奏楽部です!一緒に音楽楽しみませんか!」
などなど。朝から元気な声が飛び交っている。
入学式を終えた翌日から、校門の前では部活の勧誘が行われていた。
一応やりたいと思う部活はある。
[男子バレーボール部 マネージャー]
ただ、勇気は出ない。
こんな陰キャが男子の部活のマネージャーなんて、何を言われるかわかったもんじゃないもの。