第2章 黒き水
小学生の頃母が死んだ。
記憶は霧がかかったように曖昧で顔も声も思い出せない。
ただ、義父・甚爾と会った時のことは鮮明に覚えていた。
ーーー
『呪術高専東京校?』
ダラりとソファーに横になっていた甚爾から既に破かれていた手紙を受け取ると、長文で説明が記載されていた。
「是非だとさ…どうする?」
私には不思議な力〝呪力〟があるらしく、世の中の為にその力を使い呪霊を祓うお勉強をしましょうという内容だった。
どこで知られたのか…全く謎である。
幼い頃は色々見えていた気がするが、母が死んでから見なくなった。
まだ不思議な力あるのかな?
手紙を半分も読まずに甚爾へ返す。
『行く』
その返事に驚いたのか眠たそうだった目を見開いた甚爾が飛び起きた。
「はぁ?本気か?呪術師なんて最悪だぞ」
『どうしてそんなこと言うのよ。関係ないでしょ』
甚爾は不満そうに頭をかいた。
『それに…今の方が最悪』
「なんで」
口を結ぶ。
つまらないなんて言ったらガキ扱いされる。
母が死んでから嫌な事ばかり起こる。
何も上手くいかない。
ーーーちょっと怖い事言わないでよ
ーーー仲良くする気ある?
ーーーえ、一緒のグループなの?…最悪
私は人付き合いが苦手だった。
それを甚爾に言ったことはない。
言っても変わらない。
彼には関係ない事だから。