第8章 七年間
「怪我人に無理はさせるな」
そこに師匠が割り込んできて弟子たちは散り散りになった。俺はここでようやくヤマトさんに近付くことが出来た。
あれ、こんなに身長近かったんだ。
いつも見上げるばかりだった憧れの人。
……俺の、片想いの人。
「久しぶりだね、トオル君」
ヤマトさんからの声をこんな間近で聞いて、込み上げてくる何かを感じた。俺は出来るだけ冷静でいようとした。
「お久しぶりです、ヤマトさん」
それからにこりと笑ったヤマトさんは、やっぱり俺の好きなヤマトさんで。話したいことがたくさん溢れて、けど矢継ぎ早に喋ってはいけないと俺は唇をきつく絞めた。
「あの部屋が開いてるぞ」
気を利かせた師匠が、そう言ってここから立ち去った。周りはあちこちで芸の練習をしている弟子たちだらけだった。俺はヤマトさんを振り向いた。
「行きましょう」