第5章 アフターナイト
『さて…、これから…の貴女の
今夜のご予定は?お決まりでしょうか?』
隣に座って居るナオトが
朱莉にそう問いかけて来て。
いいえと朱莉が
自分の首を左右に振った。
「あったはずの予定は、
どうやら、無くなってしまった様です」
『そうでしたか、それは丁度良かった。
僕も…貴女と同じの様だ。あった予定が
無くなってしまって、
時間を持て余して居ましてね。
っと…、まずは…貴女に、何よりも先に
お聞きしないとならない事がありましたね。
貴女の…お名前を…、まだ
お聞きしておりませんでした』
バーカウンターの中に居た
バーテンダーが目を伏せて
首を左右に振ると。
マスカレイドナイトでのそれは、
ルール違反になるとこちらに告げて来て。
そのまま…帰る様にと…促されてしまって。
こっちは…着替える時間があるので、
ナオトさんがマスカレイドナイトを出てから
少し遅れて…マスカレイドナイトのある
駅前のビルの外に出た。
その日の…空の月は…、
満月でも無ければ。
ましてや、奇跡と呼ばれる
ブルーム―ンでも無いけど。
その月の下に…、
一人の男性が立っていて。
こちらに気が付いて、
私の方へ手を差し出して来る。
『よくよく考えてみれば…、
僕は驚くほど…に何も、
貴女の事を知らないみたいだ』
あの…夜の事を思い出してしまって。
マスカレイドマスクをしていない
彼の顔を直視する事が出来なくて。
朱莉は視線を
ナオトから逸らしてしまった。
マスカレイドナイト…、あの夜の
夢の続きを…
二人で今夜…しませんか?と
そうナオトが
朱莉に声を掛けて来て。
そのナオトの言葉に
朱莉が首を縦に振った。
マスカレイドナイト
まだ今夜は…始まったばかりだから。
マスカレイドナイト
ふたりで…同じ夢を
…貴方と私で、夜明けまで。
「朱莉…です…、
須藤朱莉……」
『これでやっと…貴女の
名前が呼べますね、朱莉さん』
そう言ってナオトが笑って。
マスカレイドマスクのその下の
彼の素顔は…、
想像してたよりも少し幼い感じの。
想像通り…よりも…イケメンだったので。
してやられた感が…するのだが…。